研究概要 |
CuInS_2薄膜に少量添加したGa成分が薄膜の性質に及ぼす影響について研究した。ソーダガラスにMoコート膜を付けた基板上に金属積層膜を蒸着し、この前駆体膜に硫化処理を施して作成した。ここで、金属GaのほかにGaS膜を積層膜の最表面または底部に置いた。金属Gaの場合、Ga/(Ga+In)=0.01 0.03の割合で底部に置いたとき薄膜のXRDピークの半値幅がもっとも低くいこと、また、GaSと比較してGa組成が膜厚内で均一な分布を示した。さらに、これらの少量添加は試料表面に出現する突起物の密度および高さを減少させる効果があることを見い出した。 薄膜太陽電池の光吸収体にNaFまたはNa_2S・9H_2Oを添加し、その性能に及ぼすNa不純物の効果について研究した。ソーダガラスにMoコート膜を付けた基板上にこの不純物を真空蒸着し、さらにIn_2S_3およびCuを総膜厚2μm、6層を堆積させた。その後この前駆体膜に硫化処理を施して薄膜太陽電池を作成した。前駆体膜のCu/In比が1.05以下の場合、薄膜太陽電池の変換効率はNaFの添加により向上した。さらに、Na化合物の添加により、光吸収体膜の抵抗率は増加し、正味のアクセプタ濃度は減少することを見い出した。 CuInS_2薄膜太陽電池のバファアー層を従来のCdSから無害な物質Zn化合物Zn(O,OH,S)またはIn化合物In(O,OH,S)に置換する研究を行った.これらはすべて溶液成長法によって製作した.X線電子分光法(XPS)分析により,これらの化合物薄膜には酸素が混入しており,それぞれZnOとZn(OH)_2,およびIn(OH)_xの形態をとっていることがわかった.Zn化合物では約120℃で吸着水が除去でき,熱処理温度を高くするとともに,Zn(OH)_2はZnOに転化した.また,熱処理によってバッファー層とCuInS_2光吸収層のへテロ界面で相互拡散が起こっていることをXPSで深さ方向の元素分布を測定することにより明らかにした.これらの化合物層はCdS層と比較して広い禁制帯幅を持っており,太陽光スペクトル中の青い波長帯に対して高い透過率を示すので,太陽電池の収集効率を高めるのに有利である.ヘテロ界面での伝導帯の不連続値はZn化合物バッファーの場合+0.44eVのクリッフ,In化合物バッファーの場合,-0.79eVのエネルギースパイクとなっていることを見い出した.
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