研究概要 |
まず、Cu/In前駆体積層膜にGaまたはGaSを加えて硫化する2段階法を用いてCuInS_2薄膜を作製したCu/III族比が1.2以下である場合でもGaをIII族組成比0.05程度添加することによりIn化合物の異相による突起の生成は抑制された。この傾向はGa源としてGaSを用いた場合よりも金属Gaを用いた場合の方が顕著であった。 つぎに、金属前駆体薄膜にNaF極薄膜を導入する効果について調べた。その結果、NaFのみの添加は太陽電池の性能をむしろ劣化させること、また、同時に酸素を導入することによりその劣化は抑制されたが特性改善には必ずしも繋がらないことが分かった。 溶液成長法によりZn(S, O, OH)およびIn(S, O, OH)極薄膜をバッファー層として光吸収体薄膜上に堆積した構造のヘテロ接合について、伝導帯のバンドオフセットをXPSにより測定し、それぞれ0.4eVのcliffおよび0.8eVのenergy spikeを観測した。前者(後者)のバッファー層を用いたCuInS_2薄膜太陽電池において、変換効率それぞれ7%および10.1%が得られた。なお、前者(後者)の場合接合の熱処理(光吸収体表面の沃素処理)が必要であった。 硫化気体としてH_2Sに比べて取り扱いがより容易な硫黄の蒸気を用いることを試みた。真空排気槽内に設置した、最表面をCuとするCu/Inの合計6層の積層前駆体膜を温度550℃で、坩堝からの硫黄蒸気に曝した。このとき、不純物相としてCuSを含むCuInS_2薄膜が得られた。この膜のCu/In比はInSの再蒸発のため1より大きくなった。これをKCN処理することによって化学量論組成を持ち、単相のカルコパイライト薄膜が得られた。
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