研究概要 |
量産性に富む2段階法によりCuInS_2系薄膜を製作し、これを光吸収体として用いて薄膜太陽電池を製作して12.25%までの変換効率を達成した。これは2段階法に前駆体薄膜への少量のGaの添加およびRTP(Rapid Thermal Process)を新たに導入することにより平坦かつ結晶性に優れたカルコパイライト薄膜を得て実現したものである。 薄膜太陽電池においてCdSバファー層と光吸収体の間に極薄Zn化合物膜を挟んだ複合構造のヘテロ接合を用いることにより、ダイオードの理想係数および暗電流密度を減少、その結果、効率を12.1%まで改善することができた。 従来の有害なCdSに代えて、溶液成長法によりZn(S, O, OH)およびIn(S, O, OH)極薄膜をバッファー層として光吸収体薄膜上に堆積した構造のヘテロ接合において、伝導帯のバンドオフセットをXPSにより測定し、それぞれ0.4eVのcliffおよび0.8eVのenergy spikeを観測した。前者(後者)のバッファー層を用いたCuInS_2薄膜太陽電池において、変換効率それぞれ7%および10.1%が得られた。なお、前者(後者)の場合、接合の熱処理(光吸収体表面の沃素処理)が必要であった。 本研究において製作された薄膜太陽電池の容量-電圧特性、電流-電圧特性、スペクトル光応答などの諸特性を理論的に説明する模型を提案した。これは、ヘテロ接合界面にn型CuInS_2層が存在することを前提としたものであり、接合電界の減少とともに開放電圧が増加すると言う実験結果を定性的に説明できた。
|