工業及び農業製品の製造工程における含水率制御は製品の品質向上に必要不可欠となっており、種々の固体物質・材料の含水率をオンラインで計測できる装置の開発が多くの分野から望まれている。本研究はこれらの要望に応えられる新しい含水率測定法を確立することを目標としている。平成11年度における実施計画では、前年度に考案した新しい測定方法、即ち「周波数の異なる複数のマイクロ波の伝播時における差異、特に位相の変化量(移相量)に着目して非測定物質中に含まれる水分を計測する方法」を実験的に検証することにあった。 本年度に於ける主要な研究実績は、8GHzおよび12GHzのマイクロ波移相量の比率から得られた関数が含水率計測用として使用でき、この関数は試料の厚さ及び密度変化による影響の少ないことが確認されたことである。本年度の実績および知見を以下に記す。 (1)マイクロ波ネットワークアナライザを用いた実験システムを構築 (2)8〜20GHzのマイクロ波に対する被測定試料(木材)の含水率と伝搬定数を測定 (3)8GHz及び12GHzの2周波を用いることがシステム上の制約を受けることが少ない (4)2周波に対する移相量φ_1およびφ_2の比が相関性の高い含水率関数になることを発見 (5)本測定法は被測定試料の厚さ及び密度の違いによる影響が少ないことを、木材(桧、杉、米松)を試料とした含水率計測に於いて確認 (6)従来法では測定困難であった密度が変化し易い物質(おがくず、緑茶等)の含水率計測が可能 (7)一つの材質中に密度勾配がある物質(木材における心材・辺材・節など)に対応した計測が可能
|