本研究では、地下埋設物のレーダー探査を対象とし、以下の特徴を有する信号処理法を開発することを目的とする。 (1)限られた観測方向のデータから3次元の物体像が再構成できること (2)レーダー波長と同程度の大きさの物体の超高解像度な形状推定ができること (3)不要散乱波や媒質の不均質性等の強い擾乱に対して安定な推定が行えること (4)探査する地表の平坦性を必要としないこと 本年度は、昨年度に引き続き、以下の3分野の技術の開発・検討を行った。 1.3次元拡張電波到来方向推定アルゴリズムの構築(笠原) 3次元物体については、エッジ回折波ならびにコーナー散乱波が存在するため複数の到来波を同時に推定する手法の開発が必要である。このため、波源分布がガウス分布に従うことを仮定し、複数の到来電磁波の伝搬ベクトルを正確に推定する手法を開発した。 2.物体像検出アルゴリズムの開発(佐藤) 雑音に埋もれた信号より、初期値推定に用いる目標物体情報を抽出するための非パラメトリック雑音除去アルゴリズムの開発を行った。特に地下探査レーダー信号に特化した放物型ウェーブレットを用いた手法について、その構成法や特性を研究して実装し、さらに2次元フーリエ変換を利用した高速化を実現した。 3.土槽実験設備の構築(佐藤、笠原) 3次元各種形状の散乱体を、誘電率および減衰率の異なる多層構造媒質中に正確に設置した模擬実験設備(約2m×1m×1m)を制作した。これに砂および電波吸収材などを充填し、上面を小型レーダーで走査してデータを取得する実験を開始した。データはインターフェースカードを介してデータ取得用ワークステーションに取得し、拡張ディスク装置に記録する。
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