研究概要 |
本研究は,多様な無線システム環境において,かつ限りある周波数資源の範囲内で,要求されるサービス品質の異なる多様なサービスを柔軟に提供するなめ,伝搬路特性,トラヒック特性に応じて,アクセス方式,無線伝送方式,周波数資源の運用方式をダイナミックに制御する,高度適応無線アクセス/伝送制御技術の開発を目的にしている. 本年度は,昨年度に開発したマルチメディアトラヒックシミュレータを用いてマルチメディアトラヒックを発生させ,発生したトラヒックに対してダイナミックに周波数資源を割り当てる適応周波数資源割当システムに関して検討した.具体的なシステム構成としては,CDMAシステムに可変伝送速度機能を付加したものとし,音声等の即時性が要求されるメディアに対しては一定の無線リソースを割り当てる一方,WWWによるファイルのダウンロードなどのように,即時性は要求されないができるだけ速い伝送が要求されるメディアに対しては,空いている無線リソースを最大限割り当てることによって高速伝送を実現するシステムについて検討した. CDMAシステムにおいて可変伝送速度機能を付加する場合,伝送速度を変えることによる隣接セルへの干渉の影響の解析が重要となる.そこで,伝送速度と隣接セルへの干渉の影響の関係を解析した.その結果,端末の位置を考慮し,基地局から近いほど高い優先権でより多くの無線リソースを割り当てるリソース制御を行うことで,隣接セルへの影響が低減でき,かつ,システム全体のメッセージ遅延特性を向上できることを明らかにした. また,あるセルで異常トラヒックが発生した場合に,トラヒック状況で決定される呼損率と伝搬路状況で決定されるパケット誤り率の両者を考慮してアクセスするゾーンを決定する適応ゾーン選択アルゴリズムについても検討し,ゾーン選択の際に変調方式及び送信電力を一括して選択することによって,異常トラヒックが発生してもその影響を大きく低減できることを明らかにした. 今後,TDMAとCDMAを複合した可変アクセス制御へ発展させる予定である.
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