研究概要 |
本研究は,筋収縮と手の運動制御メカニズムの工学的な解明と,バイオミメティックアクチュエータの開発および上肢動力装具の試作を目的とし研究を遂行した.具体的には,以下のように研究を実施した. 1.上肢運動制御実験と解析 ヒト母指筋を対象とした実験において,筋と短潜時伸張反射を含めた上肢運動制御メカニズムを解明するための計測システムを構築した.本装置は,母指を伸展させるためのリニアアクチュエータと直流増幅器,リニアアクチュエータの位置制御と,伸展量,張力,筋電図を計測する計算機システムから構成される.構築した装置を用いて,母指筋を約7mm伸展させたときの張力応答を計測した.そして,計測された張力応答から粘弾性要素による張力を抽出し,変位と粘弾性要素による張力の関係を,差分方程式により定式化した. 2.上肢運動ダイナミクスの推定 肘関節屈筋を対象とし,等角速度,外部負荷を与えた時の肘関節角度,関節トルク,筋活動度(全波整流・平滑化筋電図)を計測した.肘関節角度,筋活動度および関節角速度を入力とし,関節トルクを出力とする上肢運動ダイナミクスのモデルを人工ニューラルネットワークを用いて構築した.そして,筋活動度,関節角速度を一定としたときの,関節角度-トルク関係を推定した.その結果,関節角度40度近辺において角速度が低いときには,関節角度が大きくなる(筋が短縮)するとともに,関節トルクが大きくなった.また,角速度をおおきくすると,関節角度-トルクの勾配は,正から負へと変化することが示された. 3.バイオミメティックアクチュエータシステムの設計 バイオミメティックアクチュエータの駆動システムを試作するために必要な設計およびセンサを含むアクチュエータシステムのシステム構成の検討を行った.
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