研究概要 |
近年に実現したテクノロジーを利用した,新しいコンセプトによる,弾性波を用いたアクティブな地下構造探査技術の開発研究を進めた。本研究は,平成11年度には,従来の人工震源の性能を強化した実証試験用モデルの設計と試験システムの構築(備品購入)を行い,12年度に製作(製作は外注)とフィールド展開の準備を進めることにしていた。ところが平成11年度の研究の進展に伴い,フィールド展開が容易でなく,本格的な施工を要することが分かってきた。すなわちコンセプトは異なるがやはり精密制御震源を使う名古屋大学のシステムが平成10年度に,国の地震予知研究予算によって設置され,現在も運転を継続しているところであるが,我々が従来懸念してきたとおり震源と地盤の結合に問題が続出しており,データ解析は困難を極めている。 そこで我々は,費用その他での困難を覚悟のうえで,本格的なフィールド展開プロジェクトを立てて,地下深部の坑道中の良好な岩盤に完璧な定着を施すこととした。幸い,科学研究費として,期間が重なるもう一つの基盤研究が認められ,これを設置に投入することができたので,本研究では,設置という難問が切り離され,本来の目的であるシステムの性能向上に集中できたのである。 (1)コヒーレントな波動場を実現するための震源のフェイズドアレイのためには,回転子の速度だけでなく,位置の制御が必要である。そこで室内試験で稼動中の試作1号機において,光学センサーとモーターのエンコーダーを結合することで,位置の高精度管理が可能になった。なおモーターの速度制御は,内部クロック,外付けパルス発生器,GPS信号の3段階制御によってほぼ予測どおりの精度が達成されている。 (2)解析の基本となるインバージョンモデルの精度を上げるために必要な岩石破壊域の散乱実験データを取得するために,地震研究所が運用している大型岩石破壊実験装置において岩石の散乱実験を行った。平成12年度は,静的載荷試験による応力集中の状況の計測と有限要素法による解析,超音波による調和波動の照射実験と有限要素法による解析を行った。 (3)解析の基本となる,成層弾性体の波動解析を行った。これによって,制御震源による電動力から放射波動へのエネルギー転換の解析を行い,生成される波動場の予測公式を確立した。
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