研究概要 |
交通基盤施設の中の重要な要素である橋梁のライフサイクルアナリシスとコストについて,通常の経済性や景観だけでなく環境負荷をも考慮したライフサイクル評価システムを構築した.本システムをいくつかの既設橋梁に適用し,システムの検証を行った.しかし,各部材の長期の寿命評価については,これまで信頼性のある基礎データがほとんど得られていないため,橋梁全体のライフサイクル評価が難しい.そこで,まず裸鋼材の腐食に関する環境促進実験を行い,その結果を屋外暴露試験の結果と比較した.環境促進実験は塩水噴霧・湿潤・乾燥の複合サイクル実験であり,JIS規程のS6サイクルを採用した.腐食量と飛来塩分量とは相関が高いことが明らかとなり,環境促進実験の促進倍率と飛来塩分量との関係を導いた.さらに,橋梁の設置地域の飛来塩分量から腐食量の長期予測が可能となる式を導出することができた.この予測式は,橋梁の寿命予測や最適な維持管理手法の構築に大きく貢献すると思われる.一方,橋梁の免震ゴム材料についても環境促進実験を行い,熱老化,光劣化,塩水噴霧複合サイクルなどの影響環境因子の絞り込みを試みている.光が劣化に対する支配的要因となる傾向は得られつつあるが,現在も長期実験中である. さらに,日本における適用成果を,今後,道路基盤施設の建設整備が急速に進むと思われるアジア地域へ適用する可能性を検討した。システムの考え方は十分適用可能であることがわかったが,ライフサイクルコストの基礎データや環境負荷を考慮する際の重みづけなどの課題は残っている。
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