研究概要 |
RC構造物の設計を限界状態設計法に基づいて行う場合,種々の安全係数が用いられる.コンクリート標準示方書では,面部材の押抜きせん断強度の部材係数を1.3としているが,この値の論理的な根拠は明らかではない.本研究では部材係数の根拠を探るべく,RC床版に関する算定式12式,PC床版に関する算定式2式を研究対象とし,山口大学で行った21体を含む計297体のRC床版データと,計45体のPC床版データを各算定式に照合し,確率統計的に部材係数を求めた.すなわち,計算値に対する実験値の比を確率変数とし,正規分布関数,Weibull分布関数,指数分布関数に適合させた.RC床版に関する算定式では各算定式の精度,安全性を明らかにした.また,データの絞り込みにより累積破壊確率の小さい部分での適合性が良くなることが分かった. Weibull分布関数では,3つの係数を求めるときに分割和法を用いたが,3個の代表点をどのように与えるかを議論した.その結果,破壊確率の小さい部分での適合性について,全データを対象とした場合でも重みをつけた分割方法であれば適合性が良いことが分かった. 指数分布関数に適用する場合は,その特徴から,実験値を基準に算定値を評価した.その結果,指数分布関数は正規分布関数と同様で,対象データ数を絞った場合が危険側での適合性が向上した. 以上から部材係数を算出した結果,正規分布関数では破壊確率5%で約1.24となった.また海外示方書式における破壊確率5%では,1.14から1.46の範囲に,その他各研究者による算定式では,1.31から1.79の範囲になった.RC床版は脆性破壊を示すため破壊確率は1%程度で論ずる必要があるが,示方書式において破壊確率1%で約1.50という値が得られた.実際は,示方書ではコンクリート設計強度を規格値に示し,1.3の材料係数を用いている.算定式中ではその平方根を用いるため,この材料強度に関する安全係数は約1.14となる.この材料係数と部材係数1.3を含めれば式全体での安全係数は1.48となり,現示方書での部材係数1.3は破壊確率1%に相当することが明らかになった.
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