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2000 年度 実績報告書

地震時に流動する液状化地盤が示す粘性流体的性質に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 11450179
研究機関東京大学

研究代表者

東畑 郁生  東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20155500)

研究分担者 龍岡 文夫  東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70111565)
キーワード砂 / 中空ねじり試験 / 非排水せん断 / 大変形 / 粘性 / 液状化
研究概要

液状化した地盤の流動と残留変形を推定することが、一連の研究の最終目標である。従来の模型実験においては、円柱や球を地中に埋め込み、液状化後にこれを牽引することにより、液状化砂の物性を研究することが行なわれていた。牽引速度と牽引力との間の関係から、速度依存性を見い出し、それから流体力学の式を使って粘性係数を逆算することが多かった。そして幾多の研究者が、液状化砂の挙動に速度依存性、粘性を見い出してきた。
得られた粘性係数は、たとえば蜂蜜のような既存の粘性流体のそれと比べ、かなり大きなものであった。そこで値の妥当性が問題になり、そもそも模型実験では応力やひずみ(速度)が不均質かつ直接測定不能であることが、手法の信頼性の限界を感じさせることになった。これが本研究のような要素せん断実験が始められた動機である。
本研究の第一段階では、中空ねじりせん断装置を用い、液状化した砂試料に一方向へ単調ねじりせん断を載荷し、載荷速度とねじりせん断応力との関係から、粘性係数を直接決定しようと試みた。ところが過剰間隙水圧が発生した砂試料の中では、砂粒子と水との移動が起こり、水が試料上端に集まって膜を形成し、ねじり力が砂の骨格に伝わらない、したがって砂が実際以上に軟弱に見えてしまう、という問題が発生した。そこで別途大型ねじり試験機を制作し、そこでは水と比重のほぼ等しいスチロール粒子を使って実験を行なった。この粒子は比重が1.04であり、水と別々に動いて供試体の下へ堆積する危険、そして上部に水膜を形成する問題点が少ない、と考えられた。実験結果によれば、スチロール粒子の供試体には速度依存性が存在しなかった。これは材料そのものの物性とも考えられるが、比重が水よりかすかに大きいので、若干の水膜形成の可能性が残っていること、ねじり載荷盤の直近でせん断変形が集中し、一種の滑り面の様な状況になっていることが、問題であった。滑り面はひずみの集中と局所化であり、砂地盤全体が比較的均一に大変形する液状化地盤変形とは、異なる状況である。
ねじりせん断という載荷形式は、載荷盤と砂との間の摩擦に依存しており、ここに水膜が形成されると、不可能になってしまう。この欠点を考慮して研究の後半では、「押す」という載荷方式でせん断を行なった。すなわち三軸圧縮試験である。また、前年度の実験で判明した問題点として、非排水状態で砂を大変形させると正のダイレイタンシーが起きて有効応力が増加し、液状化状態とはかけ離れた状況になってしまうこともあった。そこで三軸圧縮試験ではあえて供試体の排水バルブを開放し、排水状態にした上で、外部から高い背圧を供給して有効応力の増加を防止した。ただし有効応力ゼロでは供試体が自立せず、実験が成り立たない。そこで有効応力を10〜30kPaで実験を行ない、得られた粘性係数を有効応力軸に沿って外挿し、有効応力ゼロのときの物性を推定した。
三軸圧縮荷重は応力制御方式で載荷された。軸差応力を瞬間的に増加させ、軸ひずみが遅延しつつ増加する状況を測定した。そしてこの遅延挙動から粘性係数を算定した。その結果によると、
1)豊浦砂の液状化した時の粘性係数としては、500〜4000kPa秒がふさわしい。ただし模型実験のような低圧で圧密された時には、より小さい値が適切であろう。
2)乾燥試料で実験をすると、粘性係数は半減する。つまり、液状化砂の粘性の内約半分は、間隙水に起因する。おそらく砂粒子間で水が渦を形成し、そこでエネルギーが消費されているのであろう。
3)沖積地盤を形成している細粒分まじりの砂でも、粘性係数は半減する。塑性を持たない細粒分が大きな砂粒子の間で、ボールベアリング的な働きをしているのかもしれない。
得られた粘性係数を用いて、液状化地盤流動の三次元大変形動的解析をおこなった。解析したのは1964年の新潟地震で液状化地盤のなかに沈下した、空港ターミナルビルの事例であり、当時の動画から沈下速度がわかっている。今回得られた粘性係数で沈下解析を行なった所、実際の値とよく整合する沈下速度が算出された。

  • 研究成果

    (6件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (6件)

  • [文献書誌] Mizutani,T.,Towhata,I.,Shinkawa,N.,Ibi,S.,Komatstu,T.,and Nagai,T.: ""Shaking table tests on mitigation of liquefaction-induced subsidence of river dikes,""Proc.l6th Int.Conf.Soil Mech.Geotech.Engrg.,Istanbul.. (未定). (2001)

  • [文献書誌] 束畑郁生: "土構造物の地震時許容変形に関する調査研究"高地震力に対する土構造物の耐震設計法に関する研究報告(土木学会). 3-19 (2000)

  • [文献書誌] Towhata,I: "Flow failure of liquefied ground : its causative mechanism and prediction of flow displacement"1st Japan-America Frontiers of Engineering Symposium, November2-4,2000,Nara. (未定). (2000)

  • [文献書誌] Kogai,Y.,Towhata,I.,Amimoto,K.,and Hendri Gusti Putra: "Use of embedded walls formitigation of liquefaction-induced displacement in slopes and embankments"Soils and Foundations. Vol.40,No.4. 75-93 (2000)

  • [文献書誌] Towhata,I.,Kogai,Y.,and Amimoto,K.: "Use of underground walls for mitigation of liquefaction-induced lateral flow"CD-ROM proceedings, GeoEng2000 Conf., Melbourne, Australia.. (2000)

  • [文献書誌] Meneses-Loja,J.,Ishihara,K.and Towhata,I.: "Flow failure of saturated sand under simultaneous monotonic and cyclic stresses"Journal of Geotechnical and Geoenvironmental Engineering, ASCE. Vol.126,No.2. 131-138 (2000)

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公開日: 2002-04-03   更新日: 2016-04-21  

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