研究概要 |
平成11年度科学研究費補助金によって,情報提供が個々人の交通行動に及ぼす影響に関する分析を2点,情報提供が都市圏全体での交通需要に及ぼす影響を分析するための準備段階として,既存の交通量配分手法の大規模ネットワークへの適用可能性の検討とその改良に関する研究を2点行った.まず,情報提供が個々人の交通行動に及ぼす影響の分析では,交通行動の変更には,情報提供前後における交通サービスの認知レベルに相当する効用差以外に変更抵抗がかかるものと考え,プレトリップ所要時間情報の提供に伴う交通手段選択行動を対象として,提供される情報の種類および変更前後の交通手段ごとに変更抵抗を算出した.また,相対的に重要度の低い属性に関する情報や情報提供前後の認知レベルの差が小さい場合には,行動変更は極めて生じにくいとの認識から,非補償型行動原理及び行動変更の閾値効果を考慮した離散選択モデルを構築し,オンルート情報提供下でのパークアンドライド行動を対象として,行動変更のメカニズムについての分析を行った.一方,交通量配分手法に関する研究では,均衡配分,および利用者最適基準に基づく動的交通流シミュレーションの異なる手法について,大規模ネットワークへの適用可能性の検討を行った.均衡配分では,都市道路ネットワークへの適用に際して問題となる高速道路への転換交通の記述法として,料金抵抗法と高速転換率法の比較を行い,現況再現性では料金抵抗法が若干優れているものの,計算時間及び分析の拡張性を考慮した場合,高速転換率法が極めて有効な手法であることが示された.動的交通流シミュレーションに関しては,追従走行モデルを組み込んだ微視的交通シミュレーションモデルの開発を行った.速度決定にファジィ的ニューラルネットワークを用いた追従走行モデルを使用して個人の運転特性を考慮することにより,交通流の再現性が大きく向上することが示された.
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