研究概要 |
本研究の目的は,エネルギー吸収型ダンパー付き高層建築物に対して,主体構造とダンパーがそれぞれの最大性能を発揮するような設計を見いだす実用的かつ合理的な構造設計法を構築することにある。本年度において以下の成果を得た。 1.アクリル系粘弾性ダンパーの単体試験を行い,振動数特性,振幅依存性を明らかにした。その結果,比較的小振幅の範囲では振幅依存性は存在しないこと,振動数依存性は4要素モデルによりかなり精度よくモデル化できることが明らかとなった。本アクリル系粘弾性ダンパーを制振要素として用い,設計用応答スペクトルに対して指定した層間変位分布を示す骨組の層剛性を見い出す方法を展開した。 2.上記の方法を用いて,粘弾性ダンパー付き中規模建築物の縮小骨組模型(3層)を設計・製作した。現有の振動台による動的振動載荷実験(スペクトル適合地震動を10波作成)を実施し,アクリル系粘弾性ダンパーは骨組みの層間変位応答および加速度応答を顕著に低減可能であることを明らかにした。また,アクリル系粘弾性ダンパーの単体試験から得られたダンパー特性を等価Voigtモデルを用いてモデル化し,そのモデルを組み込んだ上記模擬地震動に対する数値シミュレーションを行った。その結果,数値シミュレーション結果は,10波に対する最大値の平均および1波に対する時刻歴の両者において実験結果とかなりの高精度で一致することを明らかにした。このことより,上記の設計法は高い信頼性を有すると結論づけられる。
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