研究課題
基盤研究(B)
鉄筋コンクーリート(RC)骨組の地震時挙動をできるだけ忠実に再現するために、RC立体部分骨組試験体の3方向静的加力実験を行なった。試験体は実物の1/2スケールを持ち、中層建物の最下層のうち隅柱と側柱の2本を東西および南北両方向の梁反曲点位置と2層柱の中央とで切り出した部分骨組2体である。柱のせん断破壊あるいは柱・梁接合部の破壊がそれぞれ先行するように1体づつ設計した。試験体は不静定構造であるため、このままでは柱や梁に作用する応力を算定できない。そこで両柱のあいだにある梁の中央に、せん断力および軸力を測定するための鋼鉄製分力計を設置した。分力計の性能確認とキャリブレーションのために、RC梁試験体に分力計を組み込んだ実験を行なった。その結果、分力計の存在がRC梁の挙動に悪影響を与えないこと、および作用する応力を十分な精度で検出できることを確認した。骨組実験では、両試験体とも想定した破壊を生じた。柱のせん断破壊が発生した試験体では、はじめに隅柱にせん断ひびわれが生じたが、その後の繰り返し載荷によって側柱の2方向せん断力による損傷が顕著となった。接合部のせん断破壊が発生した試験体では、外柱よりも内柱の接合部の損傷が激しかった。3方向加力を受ける立体部分骨組の挙動と比較するため、平面の柱・梁接合部試験体2体に1方向水平力載荷する実験を行なった。その結果、柱・梁接合部のせん断強度は加力方向による影響をほとんど受けなかった。また、立体部分骨組内の柱と同一形状・寸法の柱を別に2体作製して、水平1方向に逆対称曲げ・せん断載荷する実験を行った。水平2方向せん断力を受けた立体部分骨組内の柱のせん断強度は、内柱では1方向載荷の柱試験体に較べて22%低下し、外柱では14%低下した。以上の実験より、水平2方向せん断力と変動軸力とを同時に受ける柱あるいは柱・梁接合部の破壊性状が骨組全体の挙動に与える影響を詳細に検討することができた。
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