本年度は、冷房需要がエネルギー消費のかなりの部分を占める事務所建築を主な対象として、空調機負荷についての国際比較を行った。また、昨年度に引き続きシミュレーションで使用する汎用プログラムの検証、拡充およびシミュレーション用気象データの検討も行った。 (1)シミュレーションプログラムの機能拡充と検証 他機関で開発されたプログラムのベンチマークテスト結果との比較により、本研究で使用するプログラムの妥当性を検討した。また、各種冷暖房・給湯システムに汎用的に対応できるようにエネルギー消費量シミュレーションプログラムの適用範囲の拡充をはかった。拡充した点は、配管・ダクト系の自由な入力方法、配管システムの暖房効果、VAVシステムの空調機負荷などである。 (2)気象データの収集、検討 シミュレーションで使用する外国および国内の気象データを収集し、適用の妥当性を検討した。海外の毎時シミュレーション用データの発生ソフトウエアMETEONORM第4版および拡張アメダスデータなど、外国、国内の最新のシミュレーション用気象データの性状について検討し、利用可能な形式に整備した。 (3)冷暖房負荷の国際比較 中規模の事務所ビルを前提とし、建物モデル、熱設計仕様、設備システム、室内発熱水準を設定し、海外および国内の気象条件を使用して、空調機負荷についてのシミュレーションを行なった。この結果、事務所建築ではヨーロッパ地域でも、暖房負荷と冷房負荷を比較した場合、冷房が大半を占めることになる傾向が見られた。しかしながら、冷房負荷の要因としては室内発熱や日射遮蔽の効果が大きいことから、室内発熱、日射制御システムの設定についてもさらに検討する必要のあることも判り、今後の検討課題とした。
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