前年度の事務所建築に加えて住宅も取り上げ、事務所ビルと住宅の両方について日本とヨーロッパの気象条件の違いが冷・暖房熱需要に及ぼす影響についてシミュレーションを行い検討するとともに、3年間の研究全体のまとめを行った。シミュレーションで使用する汎用プログラムの検証、拡充およびシミュレーション用気象データの検討も行った。 1.シミュレーションプログラムの機能拡充と検証 筆者が開発し、本研究で使用している汎用シミュレーションプログラムEESLISMについて、VAV、VWVなど流量制御によるシステム制御が可能なように拡充した。また、太陽エネルギー暖房給湯システムが設置された実在の戸建住宅についての実測結果とシミュレーション結果とからシミュレーションプログラムの再現性を検証した。 2.気象データの性状と気象条件 シミュレーション用気象データとして、日本については拡張Amedasデータ、ヨーロッパについてはMETEONORMによるデータを用いたが、これらデータの整合性を検討するとともに気象条件の違いを表す資料を作成した。 3.冷暖房用熱需要の国際比較 事務所ビル、戸建て住宅それぞれについてについて、日本6都市、ヨーロッパ9都市について暖房、空調の熱需要をシミュレーションにより求めた。事務所ビルについては建築学会標準ビルで窓仕様を3種類設定し、室熱負荷および空調機負荷について検討した。住宅については、建築学会標準住宅を建物モデルとし、断熱仕様、冷・暖房運転方式を3種類想定し、室熱負荷について検討した。 4.気象条件からみた日本の建築のエネルギー性能評価 事務所ビル、住宅それぞれについて、シミュレーション結果を用いての冷房、暖房のエネルギーを総合的に評価した。この結果、一般にヨーロッパに比べ、日本では冷房需要が大きいため建築におけるエネルギー消費量の低減には、冷房主体の省エネルギー対策が特に需要であることを示した。
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