空間の設計では、設計者自身が空間を見る目・「視点」と空間に想定するヒトの行動・「仮想行動」を設定していると考えることができ、この「視点」・「仮想行動」のあり方や見る対象に、個々の設計方法を区別し、その偏りを明らかにする鍵が潜んでいる。本研究は、この「視点」・「仮想行動」を用いた教育手法を試行・分析して、創造的空間設計のための独創的教育方法の開発を目指すものである。今年度は、エスキースの記録を行うためにコンピュータCADを活用して、設計課題の試行・記録実験を行った。 設計課題の試行・記録実験は、建築学科学生5人・社会人3人を調査対象として、一日の短期設計課題にを科して、設計の区切れ目(20分〜1時間)毎にその設計内容(CAADによる図形データ収集)とプロトコルデータを記録するという方法が用いられた。収集されたデータに対して、教育unit試行前後に創られる空間イメージの変化と「視点」・「仮想行動」の操作との関連に注目して、分析が進められている。 現在進められている分析から以下の特徴が捉えられている。 1)CAADによる設計では、予想していなかった空間「視点」の発見があり、その「視点」が新しい空間生成の種となっている。 2)鳥瞰的な空間視点は、比較的操作しやすく、多く出現する傾向を持っている。空間内部に入り込んで空間認識するような「視点」の生成頻度が低い。 3)CAADへの習熟の差とCAADソフトの操作方法の差とによって、空間を認知する構造が変化し、個人差も生まれてくる。
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