集合住宅の更新事業の典型として被災マンションの建替え事業さらにストック先進国である欧州のリノベーションを取り上げ、前者におけるコンサルタント、後者における多様な専門家の職能を探った。 その結果前者においては以下の知見を得た。 (1)コンサルタントは都市計画あるいは再開発関係のプランナー、コーディネーターを中心に建築設計のアーキテクト、エンジニアであり、さらに法律などの多様な分野をふくむ専門家である。 (2)業務については、企画・計画、内部調整、外部調整すなわちプランナー、コーディネーター的業務が、コンサルタントの中心的な業務である。設計・技術的業務すなわちアーキテクト・エンジニア的業務の担当は、事務所の性格によって異なる。事務局的業務は他の業務に比べ住民の果たした役割が大きい。 (3)事業方式の違いによって、マンションそのもの、コンサルタントの属性、業務、役割に違いが見られる。 (4)コンサルタント自身と住民の評価が食い違うのは外部調整的業務で著しく、ここにコンサルタントの職能に対する社会的認知の困難さがうかがわれる。 後者の調査研究によって以下の知見を得た。 (5)欧州諸国においては、建替え事業は更新の一つの選択肢に過ぎず、多様なリノベーションが行われている。団地レベルでの再生事業、減築、増築、分棟、連結、用途変更、バルコニーの屋内化、外壁の塗り替え、外断熱化、外構の整備等である。 (6)最も先進的であるのはデンマークにおける環境共生型集合住宅リノベーションであり、それを実現している技術、政策、産業、職能の全体像についてその概要を掴んだ。更なる詳細な調査研究が必要である。 (7)多様なリノベーションを支えている職能は既存の建築関連職能とともに事業者側のコンサルタント、住民コンサルタントと呼ばれる職能、さらに明確な社会的位置づけをもったNPOの存在が大きい。この点も今後の課題である。
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