研究課題/領域番号 |
11450230
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
日高 健一郎 筑波大学, 芸術学系, 教授 (30144215)
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研究分担者 |
河辺 泰宏 愛知淑徳大学, 現代社会学部・現代社会学科, 教授 (70195139)
佐藤 達生 大同工業大学, 工学部, 教授 (40131148)
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キーワード | ハギア・ソフィア大聖堂 / ドーム / 施工方法 / モルタル / 初期キリスト教建築 |
研究概要 |
ハギア・ソフィア大聖堂に関する現地実測調査、細部記録調査の結果を国内で整理、分析する作業を進めた。ドーム内殻写真測量の図化をもとに、リブ部分についてデジタル・データを作成し、6世紀、10世紀、14世紀建設部分の形状特性を分析した。各時代の形状に顕著な差が認められ、殻面の年代決定の根拠として注目すべき結果が得られた。分析手法と結果の視覚化、ドーム縦断面に関する形状特性とその考察については、研究成果報告会で発表済みであり、より詳しい研究成果報告書の刊行を準備中である。6世紀部分では、概してリブの形状が規則的であり弧状の輪郭をよく保つが、頂部では10、14世紀の崩落時に生じた下方への変形が顕著である。10世紀部分、14世紀部分では基準弧に対して波型の不規則変形が見られ、特に14世紀部分と隣接部分の境界は明瞭な対比をなしている。 縦断面の形状分析結果は、6世紀創建部分に刻された施工線の解析と関連付け、すでに下部構造に変形を生じていた創建時のドーム施工線が円形ではなく、4心の長円で構成され、この長円上の各点から立ち上がる各リブの縦断面においては、その半径が個々に異なるため、頂部で各リブが合致するにはリブ弧の中心高さが位置に応じて異なることを明らかにした。 東西の半ドームについては、デジタル・データを得ているが、形状解析は完了していない。現在までのところ、両半ドームに開く窓の上縁付近で、大きく曲率が変化する部分があり、10世紀(西側)、14世紀(東側)のドーム崩落に伴う落下部分と残存部分の境界と考えられる。今後、さらに解析を進めたい。また、来年度は、ドーム支持構造として重要なペンデンティヴの形状解析を行う。ペンデンティヴの曲率分布とその平均値を得ることにより、崩落して完全に消滅したいわゆる第一ドームの形状決定問題が大きく前進すると予想される。
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