(1)院の権力のありようから鳥羽・白河・嵯峨などの地域における「洛外拠点御所」の特質、またそこに開発された都市空間の構造、さらに鳥羽と白河と嵯峨の関係を把握した。さらにより広い地域概念「京都」の中で検討を深める計画である。(2)統治権の分有・分立という観点から、鎌倉・奈良の空間構造の特質、京都との相違を再評価し、院政政権や鎌倉幕府との関係を考察し、また、自然に深く関わる名所の成立と寺社参詣から「三都」の関係構造を見直した。(3)中央都市「王都」と深くかかわる地方港湾都市について、近年の発掘成果に基づいて固有の都市空間構造を見いだす検討を行い、中国・南宋の環境思想(八景・十境・市中の隠)の将来と伝播という視点を主として、「三都」とのあいだの相互作用を考えた。(4)中世「王都」の特質を広い視野から考察するために、同時期に環シナ海世界にあった「琉球王国」を検討する必要性を痛感し、文献・史料などの調査を行った結果、とくに「琉球王国」における中国・南宋の環境思想の伝播を示唆する史料を見出した。さらにこの論点を追求することが、日本の場合の理解を深めることになると考えている。(5)同じ比較史的な観点から、日本近代国家の最初の植民都市ともいわれる札幌を取り上げ、とくに草創期の札幌を対象に地図・文献資料を収集し、これまでほとんどなされていない地図の史料批判を踏まえて、北海道の「道都」(ある意味で王都といえよう)の成立過程を厳密に検証し、中世「王都」の特質と対比する基盤をつくった。(6)日本中世「王都」の成立と展開に関する参考文献・資料・史料・絵画史料・地図の収集とデータ入力を行い、研究支援データベースを構築した。
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