研究概要 |
本研究では、「クラスターからの物質創製」をめざし、次ぎのような課題に挑戦した。 a)合金クラスターの組成揺らぎと構造の安定性、状態図と電子状態の解明。 b)クラスター集合化・制御配列による特異な機能性発現の可能性の探求。 本研究計画第2年度の研究を通して、次ぎのような点が明らかになった。 1)我々のグループで設計・製作したプラズマ・ガス中凝集クラスター堆積装置のスパッタ室内に2種類の金属ターゲット(CoとPt、CoとPd)を配置し、高圧の希ガスプラズマによりクラスターを発生させ、基板上に堆積させた。透過電子顕微鏡により、基板担持クラスターのサイズ、形状、構造の観察を行うと同時に、EDXにより、化学組成分析を行った。バルク状態の平衡状態図に準拠して実験結果を整理すると、規則相形成型のCo-Pt合金の場合、クラスター状態では不規則相が形成されクラスター間の組成揺らぎは比較的小さいが、全率固溶型のCo-Pd合金の場合、クラスター状態では不規則相が形成され、クラスター間の組成の揺らぎが大きい(大きなサイズのクラスターの方か平均組成に比べてPd高濃度となる)。 2)単体金属(Co,Cu,Ti,Cr,)ターゲットを用い、1)と同様の方法でサイズ単分散のクラスターを発生させ、クラスター堆積室に僅かに酸素を導入してクラスター表面を酸化させ、基板に堆積・集合化した。これらコア・シェルクラスター集合体の電気伝導は、Cuの場合の除き、酸素導入量の増加にともない、抵抗温度係数が正の金属状態から最終的には指数関数的な半導体状態へと変化する。その途中状態では、高温で金属的なTに比例した温度変化、低温では-logTに依存する温度変化を示し、電子が弱局在の状態にあることを示唆しており、現在、電子状態について検討中である。尚、コア・シェルクラスター集合体は微量ガス検出用センサーや触媒として有用であると考えられる。
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