電流密度10^7A/m^2の直流を非晶質合金に通じて昇温すると結晶化温度が10〜30K低下し、均一核形成過程が促進される。ピーク電流密度10^9A/m^2のパルス通電では構造緩和温度以下の低温で結晶化が進み、ある合金種では新結晶相が出現する。パルス通電下で結晶化が進む時間-温度域は熱活性化過程での結晶化の時間-温度域と大きく離れており、かつ、パルス通電下結晶化は、パルス通電の時定数と電流密度の関数であり、動的要素が強い。弾性特性では、10^<-6>域の歪振幅で弾性率を数10Hzから10kHz域で測定周波数に対して測定すると、静的測定値より低い値が観測され、極小を示す測定周波数域は複数カ所ある。極小を示す10^2Hz域で、歪振幅を上げると動的弾性率が高くなる。また、歪振幅を10^<-6>にして、試料に10^7A/m^2の直流を通電すると動的弾性率は上昇する。これらの現象は、金属-金属系、金属-非金属系の多くの非晶質合金で共通して観測される、普遍的現象であり、非晶質合金に内在する密度揺らぎに起因する原子の集団運動が励起されると仮定すると統一的に説明できる。即ち、通電効果では電気泳動力が集団運動する原子数倍だけ局部的に集中し、有効電荷数Z^*が大きくなっている。動的弾性率が低いのは、集団運動が共振運動として励起されるので擬弾性歪が増えた。10^2Hz域で、歪振幅を上げると動的弾性率が高くなるのは、原子の集団運動を可能にしている相対的に密度が低い部分の擬弾性歪(局所的剪断変形)が飽和へ向かうためである。通電すると動的弾性率が上昇するのは内部応力が発生するので前記の擬弾性歪が飽和へ向かうためである。通電による動的弾性率の上昇を、歪振幅増大による動的弾性率上昇と比較して得た有効電荷数Z^*は多くの非晶質合金で似ており、10^5である。パルス通電で新しい結晶相が出現することは、これまでにない未知物質を創成出来る可能性を示唆する。通電による動的弾性率の変化は、可変音波フィルターやマイクロアクチュェータへの機能化が期待できる。
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