研究概要 |
ディッピング法により作製した数ミクロン厚の有機・無機ハイブリッド膜には,添加したTiO_2濃度やZrO_2濃度に依存してセル状のパターンが形成されること,さらにアミノ基を有する添加剤(APTS:アミノプロピルトリメトキシシラン)の添加によっても同様にセルの発現が見られることを確認した。 本研究では,このハイブリッド膜におけるセル発現が,どの様な因子に依存しているのかについて明らかにするため,ゾルの光学特性や,レーザー顕微鏡,原子間力顕微鏡(AFM)による観察を行った。 得られた知見は以下の通りである。 1.セルの発現には,ゾルや薄膜の作製時における雰囲気中の湿度が不可欠な要因である。 2.原料ゾルには,加水分解・縮重合反応の進行につれてナノメートルサイズの光散乱体(超微粒子)が生じ,その散乱強度は反応経過時間に依存していることがわかった。 3.AFMによってセルの立体構造(数十〜数百nmの高さの外周部に囲まれている)を明らかにし,セルの明瞭化と凹凸の大きさに相関関係を見い出した。 以上の結果から,セル発現は,薄膜原料であるゾル中に光散乱体(ナノメータのサイズの超微粒子)が生成する時に起きる「化学反応とマランゴニ対流が相互に関係する現象」であることが判明した。TiやZrではその酸化物超微粒子が,またAPTSの場合は,Siアルコキシド原料から生じるSiO_2超微粒子が,マランゴニ対流に運ばれ,セルの可視化を引き起こすことが明らかになった。
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