研究概要 |
本研究は、シンクロトロン放射光を利用した微小結晶回折法をセラミックスの誘起構造の研究に応用し、励起状態における電子密度分布、原子配列、組成などに関する詳細な情報を得、セラミックス科学の発展の駆動力となることを目的としている。この目的を達成するため、初年度である平成11年度はまず、イメージプレートを利用した微小結晶迅速測定システムを申請者の研究室に構築し、実験室系光源を使用した予備実験の充実を図った。また、レーザ溶融法により各種希土類ジルコニア系複合酸化物単結晶を育成し、フラックス法により、代表的な誘導体セラミックスであるチタン酸バリウム(BaTiO_3)、鉛系リラクサーPb(Nb_<2/3>Mg_<1/3>)O_3、ニオブ酸リチウム(LiNbO_3)、等のペロブスカイト系微小結晶や高イオン導電性を有するA_2Ca_2Nb_4O_<13>、ACa_2Nb_3O_<10>、(A=Na,K,Rb)などの層状ペロブスカイト結晶を育成した。また、AgGaS_2の圧力誘起条件下における結晶構造変化を調べるために、小型ダイヤモンドアンビルを利用し、放射光実験施設ビームライン14Aの水平型高速四軸回折計を用い、4.2GPaの高圧力下でその場測定を行い、その高圧構造を決定し、カルコパイライト型構造における圧力誘起構造相転移の詳細について知見を得ることに成功した。またPb(Nb_<2/3>Mg_<1/3>)O_3、においてはその平均構造の解析と放射光を利用したEXAFS解析を行い、リラクサー特有の八面体構造歪みやPb-O結合の共有結合性を明らかにした。LiNbO_3結晶においてはミクロンサイズの単結晶について放射光をもちいた単結晶構造解析に成功し、無消衰条件下で精密な電子密度分布を得ることに成功した。得られたいくつかの成果については、平成11年8月に英国で開催された国際結晶学連合会議等で口頭発表を行った。
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