研究概要 |
本研究はシンクロトロン放射光を利用した微小結晶回折法をセラミックスの誘起構造の研究に応用し、励起状態における電子密度分布、原子配列、組成などに関する詳細な情報を得て、セラミックス科学の発展の駆動力となることを目的としている。この目的を達成するため、2年目にあたる平成12年度は、前年度に設置されたイメージプレート単結晶X線回折計を用いて、無機微小結晶の種々の解析と評価にあたった。まず、鉛リラクサー系のPb(Zn, Nb)O_3の構造を解析し、さらに、LiCa_2Nb_3O_<10>、LiCa_2Ta_3O_<10>、RbCa_2Nb_3O_<10>、RbCa_2Ta_3O_<10>、NaCa_2Nb_3O_<10>、NaCa_2Ta_3O_<10>、HCa_2Nb_3O_<10>、HCa_2Ta_3O_<10>、など一連の複合酸化物微小結晶の対称性の決定と電子密度分布解析にあたった。また、各種アパタイト結晶の電子密度分布解析、Li(Mg, Mn)_2O_4スピネル型イオン導電体の電子密度分布解析などを高エネルギー物理学研究所物質構造科学研究所放射光実験施設ビームライン14および20を利用して行った。四軸型単結晶X線回折計のみならず、EXAFS、XANES、大型デバイカメラなど、種々の放射光を利用した実験装置を用いた。また、第一原理に基く電子密度分布のシミュレーションを行い、放射光を利用して実験的に求めた電子密度分布と比較した。パイライト型構造をとるMnS_2、およびLa(Sr)CuO_4高温超伝導体の遷移金属原子周りの電子密度分布については両者の良好な一致と、興味深い知見を得た。得られたいくつかの成果について各種の国際会議で発表した。また、前年度得られた結果を6編の発表論文にまとめた。
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