研究概要 |
大気開放型化学気相析出(CVD)法を利用するとセラミックスのミクロ構造制御が可能になる。例えば、酸化物結晶のミクロンメーター単位で制御されたウイスカー形状構造、網目形状構造などの構造体を形成することができる。このような技術をセラミックス膜のマイクロアーキテクチャーと定義する。マイクロアーキテクチャーを利用すると電子放出素子、構造材料、さらに光素子への展開などいろいろな応用を発想することができるため、本研究ではそれらを実現した。 本研究では、昨年度製造方法を確立することできたZnO、MgO、Y_2O_3ウイスカーなどを用いてウイスカー形状の蛍光体素子の作製をおこない、基礎特性評価を行なった。その結果、次の構造体および特性が得られた。 (1)MgO/ZnOヘテロウイスカー ZnOウイスカ上にMgOウイスカーをエピタキシャル成長させたところ、すべての結晶方位軸が規則正しく一致するヘテロウイスカーであることがX線回折学的に証明された。 (2)蛍光体ウイスカーの蛍光特性 分光装置を利用してY_2O_3 :Eu, Tb, Tmウイスカーの蛍光特性を測定したところ、ウイスカー状態の蛍光特性は単なる多結晶体の蛍光特性を上回った。1.5〜2倍程度の蛍光強度を示した。 (3)電子放射 ZnO : Al導電性ウイスカーを形成し冷陰極を形成したところ、きわめて高い電子放射能を示した。ウイスカー先端の曲率半径は10〜20nmと小さいことが理由である。 (4)ZnO : Al導電性ウイスカー強度 ZnO : Al導電性ウイスカーのアルミニウム量を変化したところ、0.2〜1.0at%では曲げ強度が落ちたものの、1.0at%以上ではアルミニウム量に応じて急激に曲げ強度が大きくなった。 以上のように、酸化物のマイクロアーキテクチャー技術によりウイスカー形態の新しい構造体を形成することでさまざまな新しい機能を発現できることがわかった。
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