研究概要 |
Fe-Cr-S系の硫化物形態について,その生成過程と機構を明らかにするためにCALPHAD法による熱力学的解析を行うとともに共焦点走査型レーザー顕微鏡により硫化物の生成のその場観察を行い,次の結果を得た。 1.Fe-Cr-S合金における硫化物の形態には,板状,粗大球状,および微細球状の3種類が存在し,その形成機構はそれぞれ共晶,偏晶および再融反応により生成する. 2.板状硫化物は初晶Feのデンドライト間にSが濃縮した最終凝固部にネットワーク状に生成する。 3.比較的大きな球状硫化物はL_1→δ+L_2の偏晶反応によって生成し,数ミクロンの大きさを呈する。 4.微細球状硫化物は,δ→γ+Lの再融反応に伴い,δから固溶度の小さいγへ変態的に排出されたSが形成する硫化物であり,主に結晶粒内に析出し,また1350℃以下の比較的低い温度で生成するため1ミクロン以下の非常に微細球状となる。 粒内析出する微細球状硫化物はCr濃度が増加するにつれて粒径が小さくなる傾向にあり、これは再融反応または共晶反応開始点に起因するものと考えられる. 5.Fe-Cr-S系の状態図の熱力学的解析を行った。鋼中におけるCrSの固溶度はCr濃度によって変化するが,1%程度のCr濃度では次の様に表せる。 log[Cr][S]liq=3.89-4500/T, log[Cr][S]δ=3.35-6550/T log[Cr][S]γ=3.43-7307/T, log[Cr][S]α=5.32-9068/T
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