研究概要 |
本年度は昨年度までの実験結果をふまえ、アルミナおよびジルコニアのマルチプルクリスタルを系統的に作製した。各試料のマルチプル粒界をHREM, EDSおよびEELSで評価・解析し、その構造と化学組成を明らかにした。 アルミナのマルチプルクリスタルとして、小傾角粒界、対応粒界、高傾角粒界を含む10種類の試料を高温接合法で作製した。粒界エネルギーは粒界性格に大きく依存し、低Σの粒界でエネルギーカスプを有することが分かった。一方、粒界エネルギーの大部は粒界近傍の弾性ひずみエネルギーに起因するものであり、粒界原子構造の寄与は小さいことも明らかにした。小傾角粒界は、1/3[1 1 00]のバーガースペクトルを有する部分転位列で構成されており、転位間には積層欠陥が形成されていた。また、マルチプルクリスタルの粒界すべり挙動は、粒界原子構造とマルチプルクリスタルの幾何学に依存することが判明した。 ジルコニアのマルチプルクリスタルとして、小傾角粒界、対応粒界、高傾角粒界を含む10種類の試料を高温接合法で作製した。サーマルグルービング法により、粒界エネルギーと粒界原子構造は粒界性格に大きく依存することをはじめて明らかにした。しかし、その挙動は金属と全く異なり、低Σ粒界でもしばしば高エネルギーを示,ことが分かった。たとえばΣ9粒界ではYの偏析が大きく粒界エネルギーも非常に高いが、これは粒界に形成される構造ユニットが大きくひずむことに起因する。一方、Σ3粒界は粒界面が(111)と(112)では全く異なる構造を有し、(111)では直線的な整合界面を形成するが、(112)面だとマイクロファセット構造をとる。粒界エネルギーと粒界性格の相関性が、原子構造と偏析挙動から詳細に説明された。
|