高温強化金属材料の一つに、塑性的に剛な介在物を延性マトリックス中に分散させた介在物含有材料があり、これには分散強化合金と金属基複合材料が含まれる。これらが高温で定常クリープ変形するときには、介在物とマトリクスの塑性ひずみ不一致の増分がその場で緩和される必要があり、この緩和機構が介在物含有材料のクリープの基本機構となる。しかし多くの実用複合材料では、1)材料作製中に導入された微細な酸化物粒子による大きなしきい応力、2)クリープ変形中に生じる繊維破断や界面剥離などの損傷といった二次的機構のみが注目されているようである。本研究では、このような二次的機構が働かない理想的な介在物含有材料を考え、分散強化合金と複合材料の高温クリープ挙動を統一的に考察した。 両材料の違いは界面周りの拡散経路の長さにあり、分散強化合金では塑性ひずみの不一致は界面周りの拡散および界面すべりで完全に緩和されるのに対し、複合材料では事実上拡散緩和が生じない。そこであるモデル材料に対し、拡散緩和速度とマトリクス単体のひずみ速度の交点よりも低応力側が分散強化合金、高応力側が複合材料と見なすことができる。完全拡散緩和下では、介在物は全く外力を担わないのでマトリクスの平均応力は外力の1/(1-f)倍となり、マトリクス単体よりもクリープ速度が増加する分散軟化が生じる。さらに低応力では、転位と介在物の引力型相互作用によるボイド強化が生じる。一方無拡散緩和下では、マトリクスの不均一変形のみによって塑性ひずみ不一致を緩和する塑性緩和クリープが生じる。
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