第二相を金属マトリクス中に分散させることは金属系材料の高温でも有効な強化法の一つである。このような第二相分散材料の高温クリープは、分散強化合金に対する転位論に基づくしきい応力の概念と、複合材料に対する連続体力学に基づく荷重移動の概念により理解されてきているが、両者は全く異なったクリープ挙動を予測しており、一つの統一された理解はなされてこなかった。この両概念の違いは、塑性ひずみ不一致の緩和機構の違いに由来するものであり、分散強化合金では界面周りの拡散とすべりにより完全に緩和されるのに対し、複合材料では事実上拡散緩和が生じず、マトリクスの不均一変形による塑性緩和が必要となる。本研究では、この両方のメカニズムを一つのモデル材料で発現させて、第二相分散材料のクリープ機構の統一的理解を得ることを目的とした。 上記目的のため、拡散緩和速度が実験可能領域にあり、界面剥離等の生じない材料として、Ti-T-B in-situ複合材料を選択した。純TiとTiB_2粉末から、混合、CIP、焼結、押し出し、スエージングにより、TiBウィスカがよく配向した材料を作製した。β温度領域で、圧縮クリープ挙動を調べた。ひずみ速度と応力の両対数プロットは、明確にS字状の挙動を示した。すなわち、極低応力域で応力指数4.5程度、活性化エネルギー300kJ/molの完全拡散緩和領域、中間応力域で2程度と135kJ/molの拡散緩和律速領域、高応力域で4.5と210kJ/molの塑性緩和領域である。また、完全緩和領域と拡散緩和律速領域では体積分率依存性は見られなかったが、塑性緩和領域では大きな体積分率依存性が見られた。この結果は、上記の理論的考察によく符合するものであり、初めて一つの材料で拡散/塑性緩和機構の発現を実証したものである。
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