研究概要 |
Fe-Pt系合金の最大エネルギー積は,バルクでは15〜20MGOeだが,スパッター法によって得られたc軸配向薄膜は35MGOeに及ぶ大きな値を示す。そこで,本系合金の単結晶を作製し,磁気特性の結晶方位依存性を明らかにする目的で研究を進めている。しかし,双晶欠陥や歪みを含まない本系合金の単結晶を得る事は非常に難しく,報告例も極端に少ないため,学術的に重要な意味がある。本年度は,Fe-37at%Pt合金母材をアーク炉で作製し,これから精密鋳造法によって円柱あるいは円錐状の試料を作製した。鋳造には熱伝導率の低い鋳型材を用い,鋳造材は1300℃の高温加熱と650℃近辺における熱処理を組み合わせて結晶粒を粗大化させ,単結晶化を図った。その結果,最大径約4mmの単結晶化した試料が得られた。結晶構造はX線バックラウエ斑点法で同定し,磁気特性は振動試料型磁力計で測定したところ,<111>方向の磁化が高くなる傾向が観察され,方向依存性の存在が示唆された。しかしながら,適切な寸法および形状の試料でなく,また,組成が,高特性を示す領域から外れている等の問題があり,明確な結果が得られなかった。 平成12年度は,より大型の単結晶作製を試み,且つ,平成11年度購入の2.1T仕様のマグネットを活用して実験を継続する。最終的に,結晶方位の制御によってバルク材の磁気特性を向上し,応用上重要である,形態の多様化に対応し得る合金磁石の実現をめざす。
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