研究概要 |
本年度では、液相拡散接合用インサート金属の合金設計を合理的に行う手法の確立とその支援システムを構築することを目的とし,ニューラルネットワークと遺伝的アルゴリズムを用いた多目的最適化手法によるインサート金属の合金設計支援システムを構築した.また,炭素鋼を対象として本システムの有効性について検証した。 接合母材は炭素鋼S45C,インサート金属組成は Ni-Cr-Si-B 合金を対象とした.合金元素の添加範囲(探索領域)は,いずれも 2〜6mass%とした.CIW を測定するための接合条件は 1423K × 600s 一定とした. インサート金属の接合性能を評価する目的関数として,インサート金属の融点,硬さ,脆性生成相生成能 (CIW) を選定し,RBF ネットワークを用いて実測データをもとに探索領域全体の目的関数を定式化した.また,評価要素の理想値は,遺伝的アルゴリズムにより求め,これらをカンターマップとして描画した.各評価要素の理想値は,融点 : 1217K,硬さ : HV209,CIW : 296μm と計算された.それぞれの評価要素に目標とする希求水準を設け,全体のバランスのとれた解を得ることと,意志決定者が意図する解を素早く求めることができる多目的最適化手法の満足化トレードオフ法を採用した.例えば,すべての評価要素を平等に考慮した場合の最適組成は Ni-3.4mass % Cr-2.0mass% Si-6.0mass% Bであり,CIW を重視した組成としてNi-4.5mass% Cr-3.3mass% Si-4.5mass%Bが算出できた.また,計算により推定された各評価要素の値は,実際の接合により得られた実測値とよく一致しており,本最適化手法の有効性が検証できた.
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