研究概要 |
Feの常温相は周知のようにbcc構造(α-Fe)であるが、Cu単結晶を基板としFe薄膜を分子線エピタキシ(MBE)法により堆積するとfcc構造を有するγ-Fe薄膜が常温で成長する。そこで本研究では、MBE法によりCu(100)、(111)基板上にfcc-Fe薄膜を堆積し、その表面における一酸化炭素(CO)の吸着・脱離挙動を高感度反射赤外分光法により、また吸着COの表面構造を低速電子線回折(LEED)を用いて検討した。 一昨年度、昨年度のCu(100),(111)基板に加え(110)基板を対象として、HBE法によりごくわずか(0.3原子層厚程度)Feを堆積後の表面にCOを飽和吸着させた場合の赤外スペクトルに基づき以下のことが明らかとなった。 いずれのCu単結晶基板も0.3原子層厚のFeにより完全に覆われることはなく、従ってFeおよびFu両表面に吸着したCO振動バンドがIRRAS法により観測される。下地Cu基板に吸着したCOの伸縮振動バンドに注目すると、(111)基板では吸着COの振動数は2073cm^<-1>とその清浄表面における振動数とほとんど変化がなく、堆積Feの影響はないといえる。これに対して(100)基板では、吸着COの振動バンドはその清浄表面における値に近い2089cm^<-1>に加え2104cm^<-1>にも現れ、堆積したFeによる相互拡散の影響を受けたCu上に吸着したCOによるものと考えられる。このFeの影響を受けた吸着COバンドは(110)基板ではさらに強く観測される。これらの結果は、堆積Feの存在状態が下地Cu単結晶表面構造や表面エネルギーと密接に関連していることを示唆している。
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