研究概要 |
本研究では、MBE法によりCu単結晶基板上にfcc-Fe薄膜を堆積し、その表面における一酸化炭素(CO)の吸着・脱離挙動を高感度反射赤外分光(IRRAS)法により、また吸着COの表面構造を低速電子線回折(LEED)を用いて検討した。その結果、Cu(100)基板上のFeエピタキシャル薄膜構造は1-4MLの範囲でfct、4-10MLでfccあった。それ以上の層数では相変態が起こりbcc構造のみとなった。またFe薄膜がマクロスコピックにはlayer-by-layerで成長していることが示唆された。得られたfcc Fe薄膜上のCOの赤外バンドは、Cu(100)基板上のものとピーク位置および半値幅ともに異なっており吸着COの波数は下地金属の結晶構造に敏感であることがわかった。さらに基盤温度を90Kから上昇させると、bcc-Feに比較してfcc-Feの場合、数十Kほど高い温度でCOが脱離し、fcc表面はbcc表面に比較してCOの解離に対する活性が低いといえる。またLEED観察からは、90KにおけるFe薄膜表面吸着COはCu(100)清浄表面で見られるようなc(2x2)をとらずランダムに吸着するのに対して、室温導入時はc(2x2)構造が観測された。Cu(111)基板の場合、Fe薄膜構造は1-4MLの範囲でfcc、4-8MLでfcc+bccあった。それ以上の層数では完全にbcc構造のみとなった。またRHEEDストリーク輝度の強度振動は明確でなく、Fe薄膜は島状成長に近い。Fe表面構造の変化(fcc〜bcc)に対応して飽和吸着時のCOの赤外バンド位置は2000cm^<-1>から2032cm^<-1>へと変化した。Cu(100),(111)基板に加え(110)基板を対象として、0.3原子層厚のFeを堆積後の表面にCOを飽和吸着させた場合、FeおよびCu両表面に吸着したCO振動バンドが観測された。下地Cu基板に吸着したCOの伸縮振動バンドに注目すると、(111)基板では吸着COの振動数はその清浄表面における振動数とほとんど変化がなく、堆積Feの影響はないといえる。これに対して(100)基板では、吸着COの振動バンドはその清浄表面上のものに加え2104cm^<-1>にも現れ、堆積Feによる相互拡散の影響を受けたCu上に吸着したものと考えられた。このFeの影響を受けた吸着COバンドは(110)基板ではさらに強く観測された。
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