PCBの処理方法として最も簡便な方法は燃焼法であるが、不充分な燃焼を行わせると、PCBは分子構造が類似しさらに毒性の強いダイオキシンに転化する恐れがあるの。そこで本研究ではハイブリッドプラズマ誘導加熱を用い10000℃に及ぶ高温でPCBを完全に分解する方法について、実験および熱力学平衡計算シミュレーションにより検討を行っている。また、PCBを高温の還元雰囲気で分解することにより化学工業原料として有用なアセチレンを副産することをめざしている。今回の研究では、基礎実験として、プラズマ高温加熱より温度が低い通常の電気炉を用い、これもPCBやダイオキシンと化学構造が類似しているトリクロルベンゼン等を加熱し、反応ガスをガスクロマトグラム質量分析計により分析している。400℃から800℃の温度範囲の実験結果では、クロルベンゼンおよびその断片と見られる分化合物が多く検出されているが、ダイオキシン生成は確認されていない。また熱力学平衡計算においては、熱分解反応におけるアセチレン、ダイオキシンなどの化合物生成量が、系中の元素比率や温度などの条件によりどのように変化するか評価を行った。その結果、固体炭素の析出を容認する計算条件と容認しない条件では結果が大きく異なるが、現実の、例えば焼却炉中の反応は、それらの中間であると判断された。また今回、ナトリウム等のアルカリ金属を系中に加えた場合に、燃焼ガス冷却時のダイオキシンの合成が阻止できるかについてシミュレーションを行ったが、ナトリウムを加えない場合に比較して、ダイオキシン生成量を1/10から1/100に減少させられるという計算結果が得られた。
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