研究概要 |
報告者らは前年度水モデルを用いて、岐阜県土岐市の無重量落下施設を利用して,微小重力(10^<-5>g,4.5秒)環境下,垂直温度勾配が存在する蒸留水中での固体PS粒子の界面張力勾配駆動型運動を観察する実験を行った。そこで、その実験結果を踏まえて、今年度には新たに微細液体粒子-液体系を用いて、微小重力環境下粒子の界面張力勾配駆動型運動を詳細に調べた。 まず、地上で純水-シリコンオイル系の界面張力の温度依存性を精密に測定したうえ,改良した落下実験装置を用いて、自由落下による微小重力環境下シリコンオイル中微細水粒子の挙動を観察した。微小重力環境になると等温系では微細水粒子が静止したのに対し、垂直温度勾配が存在する系ではそれまで沈降していた純水粒子が上昇した。粒子の直径が大きいほど純水粒子の上昇速度が速い傾向が見出された。 向井らは界面張力勾配に基づく駆動力による微細剛体粒子の速度Vと界面張力勾配K及び粒径Rとの関係について次の理論式を導出した。V=-4RK/9η(1) 今回の微小重力実験結果はその理論と定性的には一致すると考えられる。 さらに、北海道大学低温科学研究所の古川助教授との共同研究として、航空機実験を行った。その実験結果から、航空機実験に最適な観察セルの構造と形状、実験中セル内における粒子の挙動の観察及び航空機内の操作の限界など、有益なデータが入手でき、今後、微小重力状態が保持される時間がより長い(約20秒)航空機実験を用いて、粒子の界面張力勾配駆動型運動のより精密な本質的解明の期待できることを明らかにした。
|