研究概要 |
本研究は、超臨界水および亜臨界水中での金属塩水溶液からの金属酸化物微粒子の形成およびその成長のメカニズムと明らかにすることを目的とする。本年度は、 (1)微粒子生成および成長のその場観察手法の確立と (2)in-situ分光法による溶解度測定から過飽和度の評価を行うものである。 1.粒子生成成長のその場観察(装置の作成) 現有の流通式超臨界水熱合成装置の反応部に小角X線散乱測定装置を組み込み、粒子分布測定用システムの製作をおこなった。高温高圧条件での測定に先立ち、窓材のダイヤモンドの吸収による散乱強度の低下とそれの粒径評価精度への影響を調べるため、種々のサイズおよび濃度の標準サンプル(5,10,20φnmの金コロイド水溶液,30φnmSi0.2水溶液)による常温常圧下での測定を行った。最も濃度が高くかつ散乱の大きい0.5wt%,30φnmのSiO2に関しては、測定時間1hで得られた散乱スペクトルを解析した結果、±2%の精度での粒径評価ができた。一方、最も低濃度でかる散乱の弱い0.05wt%、5φnmの場合であったも、散乱はSiO2と比べて2桁ほど小さいが、1hの測定で±10%の精度での粒径評価が可能であった。来年度は本システムによる高温高圧条件でのその場観察を進める。 2.溶解度測定および過飽和度の評価 高温高圧水中での金属酸化物の溶解度測定およびその推算法について研究を行った。CuOおよびPbOについて種々の温度、圧力条件での溶解度を測定した。超臨界水の静電効果を考慮した推算式により、おおよその溶解度を予測できることがわかった。さらに推算精度を上げるため、来年度は局所構造などを考慮したモデルの開発を進める。 また、in-situ RAMAN散乱分光装置による金属酸化物の硝酸水溶液中への溶解度および溶存化学種分布の測定の装置特性評価を行った。モデル物質としては、高温高圧条件での報告例が豊富な硝酸亜鉛水溶液を用いた。低pH値および高pH値条件では、それぞれ(Zn2+)(NO3-)のZn-N結合由来のピークとZn(OH)3-のZn-O由来のピークが観察された。しかし、中性領域の低濃度条件ではピーク強度が小さいのに加えて、低シフト域であるため、ダイレクトビームに重なってしまうためである。来年度は、検出器光学系を調製し、低シフト領域の定量測定を進める。
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