研究課題/領域番号 |
11450290
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東谷 公 京都大学, 工学研究科, 教授 (10039133)
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研究分担者 |
新戸 浩幸 京都大学, 工学研究科, 助手 (80324656)
宮原 稔 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60200200)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 吸着 / 架橋 / 表面 / 表面間力 / 気泡 |
研究概要 |
本年度は、疎水性引力の中でも特に不明瞭な部分が多い、界面活性剤の吸着により作成した疎水性表面間の引力発生メカニズムに関する実験的検討を試みた。原子間力顕微鏡(AFM)のプローブ先端に疎水性粒子を固定し、疎水性引力の直接測定を界面活性剤水溶液中にて行った。得られた引力は、従来の理論では説明不可能な程強く、遠距離に及ぶものであることがわかった。また、引力の発生点に不連続点が存在するという特異な特徴が確認された。この特徴は、疎水化剤としてシランカップリング剤を用いた際の引力と類似するものであり、引力の発生には系内に微量に存在する気相が重要な影響を与えることが示唆された。また、分子シミュレーションでは、相互作用強度の異なるLennard-Jones型相互作用中心を用いて、水分子、不活性な溶存ガス分子、界面活性剤をモデル化した。まず、不活性なガスが溶存した水中における平滑な疎水性表面(カップリング剤による改質表面に対応)間の相互作用力を計算した。その結果、AFM測定の場合と類似な「発生点が不連続な引力」が得られ、この原因が、ある表面間距離において両表面に濃縮されたガスの層が合一し、ガスが両表面を架橋したたためであることを見出した。しかし、この引力発生距離は高々2nmであり、測定値(数百nm)に比べると極端に小さい。これは、表面荒さの影響をシミュレーションでは考慮していないことによると考えられた。そこで次に、表面への界面活性剤の吸着をシミュレートし、その表面の微細構造を検討した。その結果、AFM測定の条件設定と一致させるには、今回よりも極めて広い表面を設定する必要があることが示唆された。今後、さらなる大規模な計算の実現に向けては、分子モデルの抜本的な改良、アルゴリズムの高速化などが必要不可欠である。
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