本年度の目的は反応動力学的に創発性の強い反応系の連続操作における定常状態から逸脱する不安定性とその中の自励振動が出現する分岐特性を調べ、反応生成物の機能制御が可能な操作方法を探索することである。複雑系化学プロセスの反応として、1.ベローゾフ・ジャボチンスキー反応(BZ反応) 2.酢酸ビニルの乳化重合反応を、反応装置としてCSTRを用いた。また、CSTR等の混合特性を見直す実験的研究を行った。 1.BZ反応:BZ反応を構成する素過程には速度定数が非常に大きものと非常に小さなものが含まれており、CSTRで高速度で充分に攪拌した反応場であってもCSTRの容積によってミクロ混合の差異が出て、容積効果によって化学振動の出現ならびに振動状態の遷移の分岐特性が異なることを見出した。 2.乳化重合反応:酢酸ビニルの場合、水相中で均質核発生が起こり、不溶化して重合粒子となり、成長するが、乳化剤の濃度をCMC以下で制御すると連続操作であっても水相中での乳化剤濃度が大きく時間変動し、重合率したがって重合反応速度に化学振動が出現する。この現象は、(1)核発生(2)粒子成長(3)凝集 過程がサイクリックに起こるためであり、また、この重合反応の振動状態では粒度分布も振動することを見出した。
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