平成11年度の目的は化学反応の流通系定常操作であっても定常状態から逸脱する不安定性とその自励振動の分岐特性、生成物の機能変化と操作方法との相関性を調べることであった。 平成12年度の目的は同様の化学プロセスの連続操作に動的操作を賦課した場合の化学振動の安定性、機能制御の可能性などを調べることであった。また、反応操作の基本である撹拌混合にも創発的シンセシスの概念を導入して混合場の設計法を構築する研究を追加した。 1.Belousov-Zhabotinskii反応の分岐特性に対する混合の影響:速度定数が非常に大きい素過程のせいで、充分に攪拌した反応場であってもCSTRの容積によってミクロ混合の差異が出て、容積効果(スケールアップ)によって化学振動の分岐特性が異なることを見出した。 2.酢酸ビニルの乳化重合反応の自励振動と動的操作:乳化剤の濃度をCMC以下で制御すると連続操作であっても重合反応速度に化学振動が出現し、粒度分布も振動することを見出した。この現象は(1)核発生(2)粒子成長(3)凝集過程がサイクリックに起こるためであり、平均滞留時間を周期的にステップ状に切り換える動的操作により、化学振動と粒度分布の振動をより正確に制御できることがわかった。 3.混合場の設計概念:単純な流れ場であるが、混合場の設計論に対して非線形動力学および創発的シンセシスの概念を導入する道が拓けた。
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