本研究は、ケミカルループ燃焼法を固定層で行い、入口ガスを切替えることで、酸化・還元反応を交互に行わせることにより、ガスタービンへ高温のガスを供給し、発電する。粒子の運動が伴わないことから粒子の機械的破壊および飛び出し粒子が皆無となり、しかも高濃度のCO_2が特別なエネルギーを加えることなく回収できるのが特長である。本研究では、当初2本の反応器間でのガス切替を考えていたのに対して、1本のみの反応器を利用する新しいコンセプトを提案した。これにより、反応器及びタービン設備が半分で済み、価格競争力を兼ね備えたシステムとなった。 まず、熱天秤(TG)を使用して空気による酸化速度と各種燃料(水素、メタン、石炭ガス化ガス)による還元速度を測定し、金属にはニッケルとコバルトが適当であり、良好な反応速度を確保するためには、反応に関与しないアルミナやYSZを重量比で60%添加することが有効であった。燃料には、天然ガスと、次世代資源の石炭ガス化ガスについて検討し、これらはいずれも固体金属上に炭素が析出して、金属固体の劣化を招くが、水蒸気添加でこの炭素析出は防止できた。しかし、天然ガスの場合には、添加水蒸気を発生させる熱源を自前では提供できず、このシステムでは、石炭ガス化ガスを燃料にする方がよいことが分かった。この方が、還元の切替時間を3.3倍取れるため、操作面からも優れていた。 さらに、石炭ガス化ガスに対して、固定層でのケミカルループ燃焼テストを行った。その結果、出口ガス温度を一定に保つには、切替時間の適切な選択が重要因子であった。これらの結果から、装置長5m、ガス空塔速度1m/s、還元時間80s、酸化時間270sが可能な条件といえた。
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