研究概要 |
本研究が目的としているコンビナトリアル第一原理計算化学手法の開発と触媒設計への応用を行なうためには、計算化学により触媒反応ダイナミクスを解明し、さらに候補となる触媒を高速にスクリーニングすることが必須である。この目的の達成には既存の第一原理量子分子動力学プログラムでは計算速度が全く不十分であり、新規プログラムの開発を行なう必要がある。そこで我々は系の電子状態を考慮しつつ原子のダイナミクスを高速に解明することが可能な粗視化第一原理分子動力学プログラムの開発に取り組み、これに成功した。我々が開発したプログラムは既存の第一原理量子動力学プログラムと比べて数千倍以上高速でり、高速なスクリーニングが求められるコンビナトリアル第一原理計算化学を大きく加速するものと期待できる。 以上の成果に加えて、本研究ではコンビナトリアル第一原理計算化学を活用して、Fisher-Tropsch合成で用いられるFe触媒に対する最適添加成分の理論設計に成功した。Fe触媒へのCO吸着距離および吸着エネルギーに注目して、遷移金属を添加したときの効果をコンビナトリアル第一原理計算化学手法を用いて検討した。その結果、Mn,Mo,Zrを添加すると、触媒能向上および耐硫黄性の向上が実現できることが計算より明らかとなった。このうち、Mnについては実験によりその効果が実証され、コンビナトリアル第一原理計算化学の有効性が証明された。
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