研究概要 |
1.鉄二置換タングストケイ酸塩の合成 [γーSiW_<10>{Fe(OH_2)}_2O_<38>]^<6->は、γーKeggin型ニ欠損ヘテロポリ化合物、[γーSiW_<10>O_<36>]^<8-2)>と硝酸鉄を酸性水溶液中で混合することにより合成した。精製は、アセトニトリル/水からの再沈殿を繰り返すことにより行った。収率は37%であった。^<183>W NMRスペクトルは、-1334ppmと-1847ppmに強度比が2:1の2本線スペクトルを示した。このスペクトルパターンは、既に構造が報告されているマンガン二置換体^<4)>のものと一致しており、置換された2個の鉄は陵共有した2核サイトであると推論した。さらに、UV-vis、FT-IRスペクトル結果より、この化合物はC_<2V>対称のγーKeggin型構造を保持していることを確認した。また、磁化率,ESR,メスバウアー,UV-visスペクトルより、置換された2個の鉄は等価であり、3価の高スピン状態であることがわかった。 2.過酸化水素を酸化剤とする炭化水素の選択的酸化反応 鉄二置換体を触媒として種々のアルカンおよびアルケンの酸化反応を行った。アルカンの酸化において、アダマンタン、シクロヘキサンのみならず、nーヘキサン、n-ペンタン、さらにメタン酸化も触媒的に進行した。さらに,シクロヘキサン、アダマンタンの酸化に対して、鉄二置換体の過酸化水素の有効利用率がほぼ100%であったばかりでなく、n-ヘキサン、n-ペンタンの酸化においても、高い過酸化水素有効利用率を示した。またアルケンの酸化において、シクロオクテン、2-オクテン、1-オクテン、シクロヘキセン、スチレンのいずれの基質の酸化に対してもエポキシドが主生成物であり、誘導期は観測されなかった。24時間後のシクロオクテン、2-オクテン、1-オクテン、シクロヘキセンの酸化に対するエポキシドの選択性はそれぞれ96、89、85、48%であった。シクロオクテン、2-オクテン、シクロヘキセンの過酸化水素の有効利用率は92%以上の高い値となった。以上より、鉄二置換体はアルケン、アルカンの両方の酸化に対して有効であると結論した。
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