研究概要 |
ゼオライトの結晶形態を左右する代表的なパラメータである水/原料シリカモル比に基づき結晶化条件と結晶の形態を整理したところ,結晶化前の水性ゲルがpH=9.8において,水/シリカ比=30にて凝集型,水/シリカ比>100にて棺桶型のMFIゼオライトが得られた。本研究では,これらの異なる結晶形態をもつMFIゼオライトに関して,結晶化のメカニズム,特に結晶形態発現機構と触媒活性発現の関連づけを行うことを目的とした。 FE-SEMにて粒子の微細構造を観察したところ,5〜20nmのナノメートルスケールのユニット構造が観察された。凝集型ではナノ構造が凝集しており,棺桶型ではナノ構造が規則的に配列したように観察された。結晶化時間の経過に伴うナノ構造の発達が最終的に得られる結晶の形態によって異なり,凝集型の場合には結晶化初期に発生したナノ構造が凝集するが,棺桶型では結晶化初期に生成するコア(ナノ構造をもたない数μmの構造体)上にナノ粒子が規則的に配列してゆく様子が観察された。すなわち,ゼオライトがナノスケールユニットおよびそれ以下の原子レベルのサブナノスケールの結晶構造からなっており,それらがゼオライトの結晶形態を決定づけているものと結論した。 触媒活性をクメンの分解反応を用いて検討したところ,凝集型では結晶化時間4時間以降で触媒活性が変化しなかったが,棺桶型では結晶化時間の経過とともに触媒活性が増大した。また,ナノ粒子の積層した厚みと触媒活性には相関関係がみられ,ナノ粒子が積層するに従って触媒活性が増大してゆくことが明らかとなった。 以上の検討から,MFIゼオライトの結晶化途中に観察されたナノ粒子およびナノ構造は,結晶形態を決定づけ,さらには触媒活性に大きく影響する重要な構造ユニットであると結論した。
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