(1)本枯草菌が生産する抗菌物質iturinAをコードする遺伝子のクローニング iturin Aをコードする遺伝子のクローニングにも成功し、塩基配列の解読を完了した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、前頭部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が見い出された。 (2)バイオサーファクタント、surfactinの自己耐性遺伝子のクローニングと特性解析 surfactinを生産する枯草菌から自己耐性遺伝子としてyerpをクローニングすることに成功し、この遺伝子の諸特性を解析した。 (3)バイオサーファクタント、surfactinの生産性の向上 バイオサーファクタント、surfactinの生産性は数g/l程度が限界であった。枯草菌MI113C(pC115)はサーファクチンのみを生産するが、この菌に変異を加えsoy bean powder培地で培養するサーファクチン生産性は15g/lまで向上する。さらにこの変異株NA2054にyerp遺伝子を導入し、同じ培地で培養すると20g/lまで増加した。この溶液は今まで報告された値の中で最大の値である。 (4)化学農薬耐性菌の創製と植物試験 枯草菌を化学農薬と併用して使用する場合、化学農薬に耐性を示す必要がある。枯草菌を苗立ち枯病に有効な化学農薬フルトラニル100ppmで培養したところ、増殖に差はみられなかった。従って枯草菌はフルトラニルに対して耐性を本来有していることがわかった。フルトラニル存在下でiturin Aの生産量は変化しないがsurfactin生産量は1/6に低下した。Rhizoctonia solaniの菌立枯病に対するフルトラニルと枯草菌の併用試験をポットにより行ったところ、化学農薬め量を1/4に減少させることができること、土壌中から枯草菌が検出されたことから十分化学農薬の代替が可能であることが判明した。
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