研究概要 |
我々は超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis(旧称Pyrococcus kodakaraensis)KOD1内に新規な構造を有する炭酸固定酵素ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase(Rubisco)が存在することを発見した。植物や光合成細菌でよく知られているRubiscoは地球上で最も多く存在する酵素であるといわれ、ribulose-1,5-bisphosphate(RuBP)にCO_2を付加し、2分子の3-phosphoglycerate(3-PGA)を生成する反応(carboxylase)を触媒する。CO_2の代わりにO_2も基質となり、この際には1分子の3-PGAおよび1分子の2-phosphoglycolateが生成する(oxygenase)。KOD1株のRubisco(Tk-Rubisco)は従来のTypeI(Large subunit,Small subunit,L _8S_8構造)、Type II(Large subunitのみ、L_2-8構造)はRubiscoと一次構造上大きく異なっていた。また、本酵素は極めて高いRubisco活性を有し、至適温度の90℃で19.8μmol CO_2 fixed・mg^<-1>・min^<-1>の活性を示した。ホウレンソウ由来のRubiscoの活性が25℃で約2μmol CO_2fixed・mg^<-1>・min^<-1>であることを考えると、10倍も高い比活性であった。また、carboxylase/oxygenaseの比活性の割合を示すτ値も90℃で310というこれまでにない高い値を示し、極めてcarboxylase特異的な酵素であることも判明した。 我々はさらに、組換え型Tk-Rubiscoの結晶化にも成功した。予備的X線解析の結果、本酵素は5回回転軸を有することが判明した。透過型電子顕微鏡を用いて、直接Tk-Rubiscoのホロ酵素を観察した結果、Tk-Rubiscoが五角形構造をとっていることが明らかとなった。これはRubiscoに限らず、酵素として初めての五角形型のものである。
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