研究課題
これまでの解析結果から、植物細胞にアンチジーン化合物(ホスホロチオエート型オリゴ:S-oligo)を取込ませて遺伝子発現を抑制することは、かなり難しいことが判明した。そこで最終年度は、1)植物細胞に取込まれたS-oligoの動態の解析、および2)従来型アンチセンス法による転写因子遺伝子の抑制実験を行った。1.S-oligoを取込ませたタバコ培養細胞からDNAを調製し、サザン解析によって細胞内のS-oligoを調べた。その結果、S-oligoは正しいサイズで存在する(分解されない)ことが判明した。mRNA機能の抑制には、今後、細胞内に取込まれたS-oligoの量的検討が必要である。2.アンチセンス法は遺伝子の機能同定に利用できる。S-oligo法の予備的実験としてアンチセンス遺伝子の導入によるターゲット遺伝子の機能抑制を試みた。当研究グループでは、フェニルプロパノイド生合成系遺伝子のプロモーター領域に存在する発現シス配列(PAL box)に結合するタンパク質因子(NtLim1)を同定している。遺伝子発現制御におけるNtLim1の機能を明らかにするために、NtLim1遺伝子のアンチセンス遺伝子を導入した形質転換タバコを作製した。このタバコにPAL box配列を発現シス因子として持つprxC2プロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結した融合遺伝子を多重導入したところ、prxC2プロモーターの発現活性が抑制された。この結果は、NtLim1がPAL boxを介した遺伝子発現制御に機能していることを示すと共に、植物遺伝子の機能解析に対するアンチセンス法の有効性を示している。3.今後、有効なアンチジーン化合物が開発された段階で、再度、植物遺伝子の抑制法の開発に挑戦すべきであり、今回の研究はその際の方法論を提供できたと考えている。
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