研究概要 |
一般に酵素は水溶液中で反応を行うが、基質が水難溶性の場合や、加水分解酵素を用いて加水分解の逆反応である合成反応を行う場合には、反応溶液中に有機溶媒を添加して反応を行う方が望ましい。しかしながら、一般に酵素は有機溶媒存在下では不安定であり、容易に失活する。そのため、有機溶媒存在下で安定な酵素が求められている。申請者らは、先に、有機溶媒に安定なリパーゼを産生する有機溶媒耐性微生物Pseudomonas aeruginosa LST-03株の取得に成功している。本研究では、P.aeruginosa LST-03株が産生する有機溶媒に安定なリパーゼの有機溶媒安定性を分子生物学的手法により解明することを目的とする。 本年度は、まず、P.aeruginosa LST-03株の有機溶媒耐性を検討し、有機溶媒存在下で培養した場合の酵素生産について検討した。さらに、P.aeruginosa LST-03株が産生する有機溶媒に安定なリパーゼ(LST-03リパーゼ)の精製を行い、その酵素の性質を詳細に検討した。P.aeruginosa LST-03株は種々の有機溶媒存在下でも生育し、有機溶媒存在下でも有機溶媒に安定なリパーゼを産生することがわかった。また、精製したLST-03リパーゼの種々の性質を検討したところ、分子量は約27,000であり、トリグリセリドのエステル結合に対し非特異的に作用する酵素であることがわかった。さらに、LST-03リパーゼは種々の有機溶媒存在下でも非常に安定であることが明らかとなった。
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