研究概要 |
本年度は以下の結果を得た. 1.ウシ初期胚(受精卵)近傍の酸素濃度プロファイルを電気化学顕微鏡で決定し,単一胚の酸素消費速度を求めた.消費速度は,10-14mol/sのレベルであり,胚の性質に大きく依存することが明らかとなった.また,胚成長と酸素消費の相関に関して検討し,酸素消費速度あるいは胚表面とバルク酸素濃度差を指標とすることにより胚の個体差に関して検討した.酸素濃度差は胚の呼吸活性を反映しており,受精後6日の時点で,濃度差が5μM以下の胚は,その後正常に成長しないことが確認でき,この手法が胚の選別に使用できることが明らかとなった. 2.固体基板に固定した大腸菌など微生物の呼吸活性をSECMによりイメージングした.また,固体化大腸菌利用したバイオチップを作製し,抗生物質などの化学的刺激を加えた場合の呼吸活性変化をイメージングした.大腸菌チップを用いた場合には,チップを70%エタノールで処理すると,固定化大腸菌の呼吸活性が消失していることが明らかとなった.また,抗生物質であるアンピシリンおよびストレプトマイシンで処理した場合には,これらの抗生物質の濃度に対応し呼吸活性が減少した.呼吸活性変化を定量的に評価し,通常使用されている寒天培養法による発育阻止濃度との相関を検討したところ,チップを用いたSECM計測した場合の方が高感度しかも短時間で,抗生物質の薬効を評価できることが明らかとなった.
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