研究概要 |
合成反応を高度に制御し,新規の反応剤や触媒を設計するうえで高い機能と簡潔さ,普遍性を備えた化学の基礎理論が必須となっている。本課題では,相互作用軌道対の方法,射影反応軌道の方法を基礎として軌道相互作用理論の新たな枠組みを構築し,活性分子種の設計と反応制御のための方法論を提案するための研究を展開している。平成11年度は,シクロプロペンとジエンとのディールス・アルダー反応の立体選択性について検討し,副次的軌道相互作用の重要性を初めて定量的に明らかにするとともに,従来言われてきたような単純なスキームでは立体選択が説明できないことを示して,J.Org.Chem.誌に発表した。有機化合物の反応性に遷移金属錯体がどのように影響するかを予測することは,新規触媒や反応剤の開発に不可欠である。本研究ではパラジウム錯体に配位したメチレンシクロプロパンあるいはトリメチレンメチルと求核剤との反応の経路を理論計算によって解明し,特定の経路が有利になる理由が相互作用軌道対により明らかになることを示して,Inorg.Chem誌に発表した。さらに,エチレンオキシドとアルコールの反応における酸の効果についても理論的に解明し,J.Org.Chem.誌に発表した。また,アミノボラン類の付加環化,アノメリック効果などについても新たな観点から解析を進め,それらの結果を論文にまとめて投稿中である。
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